バクト! (富士見ミステリー文庫)

著/海冬レイジ イラスト/vanilla 富士見書房富士見ミステリー文庫


富士見ヤングミステリー大賞<大賞>受賞作。ほのかにLOVEありバクチ小説。
強さの根拠が薄弱。たとえば「マルドゥック・スクランブル」では、主人公がなぜギャンブルに強いのかが(ページ数にハンデがあるにしろ)じゅうぶん説明されています。そのうえで強敵を用意し、またその敵の強さもじっくり描写し、主人公を窮地に立たせ、と印象づけます。しかしこの作品での強さの印象づけは、敵のイカサマを見破って勝ちました、だけです。駆け引きはなく、あっさり見破って勝ちます。で、資料小説という印象に。
あとブラックジャックですが、山札が残り30枚になるまで使うっていうのはどうかと。10組の半分使わずに仕切り直しっていうのもあるのに。ああ、ここはあとがきにある意図的なうそのひとつですかね。でないと超記憶だけでなく超計算が必要になりますから。
キャラは語り手のおバカ加減も含めて立っていて、さすがは受賞作です。ギャンブル部分もマルドゥック〜などの傑作を頭に入れた「上から目線」にならなければおもしろい。ただ、ギャグの多くがセクハラまがいで、女性教師視点で語っているぶんにはいいんですが、錦織*1視点での語りには嫌悪感を持つ人がいそう。つまり私が。
あれ? えーとミステリー大賞? ……ちょっと読み直しますね。

*1:ネタバレですが、この人もまああれですが